#16-7 エイプリル・ラブ・フール
◆校内放送
堀鍔学園
昼
おなじみの音楽とともに、放送部の四月一日の軽快なトークで校内放送が始まった。
"みなさんこんにちは~。堀鍔学園お昼の校内放送『放課後まで、待てな~ーい!』の時間です。
水曜日の担当は、私四月一日と、"
"・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・百目鬼です"
"・・・さて・・・と、気を取り直して、今日の放送は、毎年恒例の『堀鍔学園エイプリルフール企画』をお届けします。なんと今回は、プレゼンターのユゥイ先生にこちらまでお越しいただいています!!"
"こんにちは"
ランチの時間、談笑しながら放送に耳を傾けている生徒たちから歓声が上がった。
"えー、今年のテーマは『愛ある嘘』、ということですが、担当してくださったユゥイ先生からいろいろお話を伺っていきましょう!"それではユゥイ先生、まず、今回の嘘をついたきっかけとは、どんなところだったのでしょうか?"
"初めて理事長からこの話を聞いたときには正直戸惑ったけど、ちょうどボクの身近にいる大切な人が困っていたから、このテーマを借りて何か出来たら、って考えたのが始まりだったんだ"
"実際には、誰に嘘をついたんですか?"
"黒鋼先生と、それからファイにも、ってことになるかな"
"ファイ先生というと、ユゥイ先生の一番身近な人ですよね。難しくはなかったですか?"
"そうだね、秘密を持つのはやっぱり心苦しくて、難しかったよ"
"では、どんな嘘をついたんでしょうか?"
"ファイが少しの間仕事を休んでイタリアに帰る事は、みんなも知っているよね。そこで、今日まで事情を全く知らされていない黒鋼先生に対して、理事長から『ファイが仕事を辞めてイタリアに帰る』って、嘘をついてもらったんだ。この嘘についてはファイにも秘密でね"
"それで、理事長の嘘を信じた黒鋼先生が、ファイ先生のいる空港まで向かったわけですね"
"そうだね。その先はどうなるか分からなくて、本当にはらはらしたよ"
"そうですね~"
"今では、ほっとしているけどね"
"では、ずはり今回のテーマの『愛』、とはどのあたりなのでしょうか?"
"う~ん、言葉で説明するのは難しいけど、当たり前みたいに近くにいると、お互いに大切な事を見落としがちになると思うんだ。・・・これは自戒も込めて、ね。今回の嘘をきっかけに、いつも一緒にいるファイと黒鋼先生の友情が更に深まるといいなって思ったんだよ。"
"・・・・・・・・・・・・・・・・・あれは、友情ですか?"
"っ百目鬼!てめえは余計なとこだけ突っ込むなッ!!"
"あはは。そうだね。情には変わりないってことで許してもらえると助かるんだけどね"
"・・えー、では引き続き、みなさんお待ちかねの『その先』を音声でお届けします。
場所は成田空港。音声は、ハンズフリーの状態でファイ先生と繋がっていたユゥイ先生の携帯電話から録音しました。それではノーカットで、どうぞ!"
ガヤガヤどいう雑踏にまぎれて堀鍔学園ではおなじみの人物の声が聴こえて来た。
"ファイ!"
"黒さま・・ほんとに来ちゃったぁ・・"
生徒たちは、息を詰めて校内放送に聞き入った。
今日は4月1日。エイプリルフール。
恒例の季節行事第一弾で、堀鍔学園の新年度が幕を開けた。
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